ヒストグラムというとデジタル特有のもので、フィルム写真とは全く別物。
という印象の方も多いと思いますが、輝度や色を棒グラフで表したものなので、決してデジタルだけのものではありません。
勿論、フィルム写真の場合は、ヒストグラムを意識して撮影しているわけではありませんが、アンセル・アダムスによって提唱されたゾーンシステムも、ある意味ヒストグラムに共通する作品制作のプロセスといっていいかもしれません。
スポット露出計によって導き出された露出の輝度を仕上げのプリントにリンクさせる技術がゾーンシステムなら、ヒストグラムもまた、仕上げのイメージを導き出すプロセスのひとつといっても過言ではありません。
あまり、理屈が先行すると先を読むのが辛くなるでしょうから、今回のテーマであるヒストグラムについて参考になる見方、考え方について説明をします。
まず、ヒストグラムは完全になだらかな山型で左右が両端についていなければならないという誤った観念を取り去りましょう。
確かに、標準的な被写体を撮影する場合は、この基本的な形がいいでしょうが、コントラストが極端に少ない。もしくは、極端にある場合は、全く違う形になります。
よって、どんな被写体を撮影しているかで、ヒストグラムの形は変わってきます。
これは、インターネットや写真の解説本にも出ていますから、理解している人も沢山いるでしょう。
実は、ヒストグラムの活用はそれだけではありません。
ほとんどの方は、撮影後のカメラの液晶モニタを、明るさや色基準としてみていますね。これは、要注意です。
なぜなら明るさは相対的であるからです。
以下の画像を見てください。
↓ ↓ ↓
http://web.mit.edu/persci/people/adelson/checkershadow_illusion.html
一見するとAとBの明るさは全く違って見えますが、実は同じ濃度なのです。
つまり、人はものを常に相対的に見ています。よって、まわりが明るい時はモニタの色が暗く見えますし、暗い中ではモニタは明るく見えるのです。
そんな時に役に立つのがヒストグラムですね。
グラフの形状は環境の明暗差に関係なく、輝度の分量をグラフで表してくれます。
さらに、ここからが重要なのですが、写真の仕上げに最も適した露出はどこか?
というポイントを探す際にも役に立ちます。
この使い方こそ、アンセル・アダムスのゾーンシステムに近い考え方だと思います。
今ではすっかり使用する機会は減ってきましたが、私自身、フィルムカメラの場合は、上図のような写真撮影時には、ハーフNDを使用して露出をギリギリのアンダーに撮影して、仕上げで明度・色調やコントラストを調整して作品をつくっていましたから、スポット露出計は欠かせないツールでした。
今では、デジタルカメラのヒストグラムがこのスポット露出計の代わりに役立っています。
勿論、フィルム(厳密に言うとフィルムもメーカー・種類で違います)とデジタルは特性が違いますし、露出の決定値も違えば、ラチチュードも違いますから、全く同じではありませんが、写真を撮影するということは、作品を制作するという意味なので、撮影時から仕上げの作品をイメージしてシャッターをきることは当然で、シャッターを切ったら写っちゃった。
というのでは、厳密な意味で作品制作とはいえませんね。
そうはいっても、この偶然が写真になるのも写真の魅力の一つですから、決して悪くはありませんが…
ただ、諺にあるような「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということは現実には殆ど無いということをお伝えしておきたいと思います。
具体的な撮影プロセスについては、下の動画を御覧ください。
今回はちょっと難しかったですかね^^;