皆さんはカメラのプレビューボタン(絞込みボタン)の存在をご存知だろうか。写真は、絞りとシャッタースピードの組み合わせがとても重要になるが、絞りを決定する要素は何か?と聞かれたら、ほとんどの人がピントの深さ(被写界深度)と答える。そして、ピントは手前から奥まで全てにピントがあっている方がいいので、できるだけ絞って撮影するほうがいい、と思っている。しかし、ピントの深さはレンズの焦点距離(レンズのmm数)によって決まる。すなわち広角レンズほど被写体深度が深く、望遠レンズの倍率が増えるほど被写体深度は浅くなる。さらに、距離にも関係してきて撮りたい対象物からカメラまでの距離が近くなるほど、ピントはわずかにしか合わなくなり、距離が離れるほどピントは全体にあってくる。
被写界深度は、ピントを合わせた距離と、レンズの焦点距離から理論的にピントの合う範囲を導く出すことは可能であるが、実際の撮影現場でいちいち計算する人もいないし、する意味もない。よって、大概は適当に決めているというのが実情である。よく、撮影会などで質問されるのは、絞りはいくつにしたほうがいいですか?という質問である。風景などであれば、絞りは11~16程度が妥当ということになるが、これではあまりにも主体性がない。
写真を決定づける大切な要素は、自己表現力であり、撮影から仕上げに関してのイメージを持って撮影することこそが写真である。ということになれば、絞りとは作品の根幹に関わる問題でもあるわけだ。
そこで、大切になるのは被写界深度ということになる。被写界深度は作品を決定する際の重要なファクターであり、徒や疎かにできないのである。その意味でプレビューボタンは撮影者にとって重要な機能といえる。その証拠に、これだけ進化した時代のカメラにも、そのボタンはついている。(写真の赤い矢印)元々、現在の一眼レフのように開放測光(絞りを絞っても暗くならずに絞り開放のままピント合わせができるシステム)ではなかった時代は、常にプレビューボタンを押している状態だった訳で、絞りの具合を必ず確認して撮影していたのである。この絞り込んだ状態で、ピントの合う範囲を確認して、撮影することが、仕上がりの写真のイメージを作ることにつながる。もっとも、実際に使ってみると暗くてイメージがわかりにくいという方が大半であるが…
そこで、これよりコツを伝授したいと思う。まず、ファインダー全体を見ないことである。絞りを決定する要素といえば、どこからどこまで合っているか、ということであるから、手前から奥までの合わせたい距離の1/3程度の位置にピントを合わせて(手動でピントを合わせる)、プレビューボタンを押して、奥の合わせたい位置を一点凝視するのである。これは、PLフィルターと同様である。PLフィルターも反射を除去したい場所を一点凝視してフィルター枠を回転させる。これにより、ただ暗くなってしまい効果がわからないということはなくなる。更に、デジタルカメラの方は、ライブビュー映像を見ながら絞込みボタンを押すとより分かりやすい。ただし、これは慣れるまでで、ファインダーを覗いた状態で行うことが理想的である。なぜなら、撮影時にファインダーから目を離して操作をするとなると、撮影の集中度が散漫になりファインダーを覗いた瞬間のイメージから遠のくからである。
最後に、写真は手前がボケているとシャープ感を感じないので1/3にピントをあわせても手前があっていない場合は、手前がボケない程度にピントを手前側に合わせることも重要な写真の秘訣である。